2023.3.19(日)月例観察会「モグラ」
講師:国立科学博物館 川田伸一郎さん
今月は「知っているけれど見たことない人が多い」動物、モグラの観察会でした。
モグラをなんで見たことがないのか?
それは身近な所にいるのに土の中から出てくることが少ないからです。
しかし、モグラを探す手掛かりはあります。
田んぼの周りにはいくつもこんもりとした土の山、モグラ塚があります。
まず、参加者めいめいにモグラ塚を掘ってみました。
すると、塚の斜め下に穴がありトンネルが伸びていることがわかりました。
よく、「塚から顔を出すモグラの絵」がありますが、実はそれは間違いで、塚は出入り口ではなくトンネルを掘って押し出した土なのだそうです。
川田先生はこの田んぼの周りを住みかとしているアズマモグラを1頭、一昨日に捕まえておいてくれました。みんな、初めて見て触れるモグラに大興奮です。
土を入れたタライの中をゴソゴソ動き回るモグラの鼻先にミミズを置くと、鼻をピクピクさせて噛みつきます。
食べる時にはミミズの頭から食べ始め、半分ほど食べ進んだら土などを含んだ消化管内容物を前足でしごいて出し、次に後端から残り半分を食べます。
モグラの行動がよくわかる金網のトンネルに入れると、両前足でミミズを押さえて中をしごいて出す様子が見られました。
土っぽいのは美味しくないのでしょうか。
また、食べるミミズの種に好みがあり、みんなが採ってきてくれたもののうち小型のものはよく食べましたが、太くて大きなものは嫌々食べて残していました。
生きているものだけではなく、死んだものも食べるそうで、一昨日からキープされていたこのモグラは鶏の砂肝を与えていたとのことでした。
寿命は3~4年。年1回子供を産み、妊娠期間は30~40日。
若い個体が秋に地上で死んでいることが観察されるので、親の巣から離れるのは秋と推察される。
活動-休止サイクルはだいたい8時間で、水はけのよい木の根付近に寝るための巣を持つ。臭いで情報を得たり、やり取りしたりしている。
このような生態や生活史がわかっていますが、野外でいつ、どうやって雄と雌が出会うのかなどわかっていないことが多いそうです。
参加者からは次のような質問がありました。
Q. 陽に当たると死ぬ?―A. 日光に当たって死ぬことはないが、モグラは土の中で暮らしているため体温調節が苦手で、暑くて死んでしまうことがある。
Q. 毛がわりする?―A. する。夏毛・冬毛があって、ちょうど今頃冬の長い毛が抜ける。
Q. モグラは勝手に捕まえてよい?―A. できない。県の鳥獣保護管理の担当部に申請して許可をもらえば捕ることができる。
Q. 隣のトンネルのモグラと活動が同調する?―A. する。隣の縄張りのモグラが休んでいる時に攻め込んで隣が不在になってしまうと、そこが空白地になって他個体と切り離され繁殖に加われなくなる可能性が高くなるため、互いに活動時間を同調する。
なかなか見ることがない生きているモグラをキープして、参加者からのいろいろな質問に応えてくださった川田先生、ありがとうございました。
最後に、参加者に観察をさせてくれて、疑問をたくさん残してくれた田んぼのアズマモグラ(雄)に感謝を。
文・写真:Yoshitake
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