2022.11.13(日)曇り 月例観察会「苔(コケ)」 参加者:子ども14人 大人20人。
講師:ミュージアムパーク茨城県自然博物館 鵜沢美穂子さん
里山の木々も赤や黄色に色づき始め谷津田を舞う落ち葉吹雪が美しい季節となりました。
今日は地面に一番近い所で静かに生きる「コケ」について、コケとはどういう生き物なのか、種類など長年研究を続けておられる鵜沢美穂子先生を講師に迎え教えて頂きました。
先生は博物館の「コケ」観察イベントを年間通して開催したり、日本中のコケの研究を続け2021年秋~冬は「こけティッシュ 苔ニューワールド!-地球を包むミクロの森-」の企画展を担当されたり、図書「あなたのあしもとコケの森」も出版されています。
コケは植物の仲間で、細胞に葉緑体があり光合成をして自分で養分を作り出します。
しかし、他の植物と違い、水分や養分を運ぶ道管・師管が無く、胞子で増えるという特徴があります。
水分がなくなると枯れたようになるが水をかけると元の姿に戻る不思議な生き物です。日本には1900種、世界には2万種あるとの事です。
「コケ」は「蘚類」「苔類」「ツノゴケ類」の3つに分類されます。一番多いのが「蘚類」、次が「苔類」最も少ないのが「ツノゴケ類」です。
今日はルーペ、コケ分類表、コケを貼るテープ、水を入れたスプレーをご準備頂き子どもたちが楽しく学習できる準備をして下さいました。ワクワクしながら里山へと出発です。
山道の途中、コナラの大木の周辺の地面の観察から始めました。
最初に見つけたのは「コツボゴケ」、蘚類で大きくて丸い葉があり、もじゃモジャとした根のようなものは仮根といいます。
「ハイゴケ」は枝分かれしながら地面を這うように広がっています。子どもたちはコナラの幹の根元に貼り付いている苔を次々と見つけては先生に届けます。
「ツヤゴケの仲間」「コカヤゴケ」「キャラボクゴケ」「ハリガネゴケ」「ツクシナギゴケドキ」と同定されました。胞子嚢があるかどうかルーペでよく観察するよう助言がありました。
子供たちはコケを見つけては「これは何ですか?」と、先生に質問攻めです。山道の斜面の乾燥地では「ツチノウエノタマゴケ」「ギンゴケ」、更に日当たりのよい乾燥地では葉が丸まって乾燥した「センボンゴケの仲間」も見つけました。
大池入口の日陰、地面や朽ち木では「アオギヌゴケの仲間」「タチヒダゴケ」帽子をかぶったような胞子もあります。
池に面した藪の土手には「ツチノウエノカタゴケ」「ナミガタタチゴケ」、小川沿いの土手には赤緑色した「アカイチイゴケ」を見つけスプレーで水を掛け赤色を詳しく観察しました。
その他、「イワイトゴケの仲間」「ホウオウゴケの仲間」も観察しました。
次は、稲刈りも終わり穂架がけされた谷津田沿いを下りて株の残った田んぼの土の苔です。
世界一小さいと言われる「カゲロウゴケ」、卵型をした黄緑色の小さな丸い胞子嚢、見つけた時は感動です。もう一つ小さな「アゼゴケ」、こちらは細い柄の先に胞子嚢を持っています。
水が引いた田んぼの土にかすかに生きる小さなコケをルーペで堪能しました。
そして最後は道端の土手に広く分布した「ゼニゴケ」、雄株と雌株の形の違い、胞子を持った雌の胞子嚢、雨で精子が飛び受精する事や、おわん型の杯状体に入っている小さな無性芽も観察しクローンでも増えることができるコケであることを教わりました。
コケをよく観察すると乾燥した道端、水分の多い土、樹木の幹、土手、草原、畑や田んぼ等、あらゆる所に多様なコケが生息していることに気付かされ、姿や形も様々で個性豊かにこの地球に生きている生き物でした。
先生は事前の下見も熱心にして頂き、今日の観察会に備えてくださり、お陰で子どもたちはコケ観察に夢中になり、質問が絶えませんでした。
楽しいコケの観察会をして下さり誠に有難うございました。
文:Tanoue、写真:Nishikawa