月例観察会「土壌」 2024.12.1(日)晴れ
参加者:子ども10名 大人23名
講師:筑波大学教授 生命環境系教授 田村憲司さん
今年最後の月例観察会は、いつもは靴で踏みしめるばかりで気にも留めることの少ない「土壌」を触ったり観察したりして沢山のことを学びました。先生は初めに、土壌は生命が存在しないとできない、地球上には様々な生き物がいることで土壌ができる。そして、土壌の大きな役割を4つお話くださいました。
一つには、土は植物を育て80億人もの人口を養っている。
二つ目はミミズやモグラ、アリ等、生き物に住み家を与え生態系の土台に位置している。
三つめは水を貯え浄化する。
四つ目は落ち葉を分解して最表土を作る等、大切な機能を持っている等の紹介がありました。
そしてそれぞれシャベルをもって里山に向かいました。今回は4か所の土壌を掘って観察し、その違いを目で見て触って確かめました。
最初の観察ポイントは、過去に土を大量に移動した下層の土で褐色です。
乾燥しており指を入れてみましたが入りません。土を移動してから約50年も経過していますが当時のままの土壌です。
次は雑木林の土で毎年下草が刈られ手入れされた土壌です。
指を入れるとふかふかした感触があり指が奥まで入りました。色も黒っぽく団粒構造も見られました。この土ができるのに何と数百年との事です。
しかも茶色から黒色で、有機物の働きで黒い厚い土壌の層ができるのには数千年かかるとの事で気が遠くなる年月を必要とします。
ところで土壌のでき方には落ち葉が積もって分解が始まった表層部分をO(オー)層、その下の黒い土壌がA層、その下の茶色がB層です。
A層には団粒構造があります。
B層土壌をよく観察すると、土壌の塊(かたまり)にはそれぞれ小さな穴や大きな穴があり水持ちもよく、水はけもよくこの穴を土壌孔隙(こうげき)と言い、土砂崩れを起こりにくくします。
雑木林の土は何千年も昔のまま保持され、しかも適切な管理が行われているため高次構造が維持されているのです。
次は、竹林です。
モウソウチクの葉が土壌表面を覆いシート状で土は乾燥してサラサラに近い状態です。竹の根が密生していて指は入りません。土壌は水分を吸うことなく団粒構造が破壊され、土壌動物も貧弱です。
つまり大雨が降るとササの葉のシートの上を表面流去水として流れ出て行ってしまうため、土壌はいつも乾燥しているのです。
保全のためには竹の密度を少なくして明るくし、下草が生えるくらいの管理が望ましい。自然に任せた竹林保護は危険であり、適切な管理が大切です。
最後は畑の土です。
毎年耕して有機栽培を続けているため黒い土です。成熟した土壌は、植物が多く、根も多い。人工的に耕して有機物を入れていくと柔らかくなり、A層が厚くふかふか状態になります。
その上、A層(作土層)の団粒構造も維持されます。
土壌構造を破壊しないことが最も大事です。
畑に入れる堆肥は自分達で作った落ち葉の堆肥を使用し、外からの肥料はできるだけ持ち込まないのが望ましい。土壌の香りにはリラックス効果があり、幼児体験として森林の土壌の香りを嗅ぐ体験をさせてあげたいとのお話がありました。
土のでき方、土壌の構造の違い、土の役割、土壌管理まで幅広く教えて頂き有意義な観察会でした。誠に有難うございました。
文・写真:Tanoue