2024年5月20日月曜日

2024.5.12 月例観察会「田んぼ」

 5月 月例観察会「田んぼ」 2024.5.12(日) 晴れ

講師:農研機構 嶺田拓也さん

水をはった田んぼは周囲の景色を写して輝きとても美しい季節です。

しかし古代から続けられてきた田んぼは危機(クライシス)を迎えていると、講師の嶺田先生からお話がありました。

今では田んぼの耕作面積は1960年代と比べると霞ケ浦の4.4個分が消失、農業従事者はピーク時の80%減少、米の一人当たり年間消費量は1960年代の約半分の51㎏、米を作っても安い、農業の後継者不足等で日本の田んぼは減り続け自然環境や生き物の環境が大きく変化してます。

今後、これまで見慣れた田んぼが消えてしまうかも知れないとの危機的なお話です。

では宍塚の里地・里山にはどのような田んぼがあるのか、生き物はいるのか、水田の水は何処から来ているのか等、観察しながら歩きました。


里地の田んぼは米作りだけではありません。

レンコンの田んぼ、四角の田んぼや不整形な田んぼ、田植えが終わったばかりの田んぼ、耕作をやめてしまったのかなと思われる田んぼ、何十年も耕作放棄された田んぼ、一面太陽光パネルで覆われ姿を変えた田んぼ等、田んぼの姿は実に多様で次第に減ってしまいそうな風景でした。

水は地下水をくみ上げたり、里山からの水が用水路を通って来ていたり、桜川の水が用水路から送られていたりしています。

田んぼから一段低い排水路も無くてはなりません。

さて、田植えが終わった田んぼではどんな生き物がいるのでしょうか。

ネットや観察カップですくって手に取って観察しました。

ジャンボなオオタニシ、ヒメタニシ、サカマキガイ、希にヤゴ、無数の動物プランクトン、ミミズ、ミズクモ、小さな甲虫、アマガエル、日常では見られなくなった生き物が沢山生息していました。最も多かったのは動物プランクトに次いで貝類でした。

次は里山から流れ下る用水路の上の道路を歩きながら里山へと移動しました。

里山の景色は新緑に覆われ緑一色です。

シュレーゲルアオガエルが甲高い声で盛んに鳴いています。

代かきを終えた不整形な「田んぼの学校」の田んぼ、その奥には広い休耕田もあり、暫くはそこで自由に生き物探しをしました。

小型のヌマガエル、アマガエル、ニホンアカガエル、クビキリギリス、シュレーゲルアオガエル、ツチイナゴ等、子どもたちはカエル追いかけ捕まえるのに夢中でした。最も個体数が多いのはヌマガエルでした。

生き物の観察の次は山あいの谷津田に向かって小川沿いを歩くと「自然農田んぼ塾」で田植えの準備が行われていました。

この田んぼは無農薬、無施肥、無起耕の田んぼで、全行程機械を使わない稲作りが多くのボランティアの手によって続けられています。

生き物にやさしい田んぼ作りで、この春産卵孵化した絶滅危惧種のニホンアカガエルのオタマジャクシを沢山見ることができました。

この谷津田は1960年代耕作放棄されヨシやらヤナギ等が繁茂して人が入れない状態でしたが、サシバの里山目指してボランティアが開拓して蘇らせたのです。

ゴールの大池目指して土手を上がると、開けた清々しい景色、ヒシが湖面を覆い始めています。

この大池の水が谷津田の田んぼを潤し、里地へと繋がって米作りに役立てられているのです。

その先は、備前川に流入し霞ケ浦の湖水の水源ともなっています。


今日は宍塚の里地、里山の田んぼを観察しながら減少しつつある田んぼや、一方でボランティアによる手作りの田んぼまで人々の営みがありました。

弥生時代から始まった日本の米作り、今では田んぼの危機と生き物の危機を目と身体で感じ、これらの危機を止めるための一歩を考える貴重な機会となりました。

今日は田んぼについて学ぶことの多い観察会でした。

お忙しい中、ご指導頂き誠にありがとうございました。


文・写真:Tanoue

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