2025年9月14日日曜日

2025/09/14 9月の月例観察会「昆虫」

 講師:農業・食品産業技術総合研究機構 今野浩太郎さん

 参加者:子ども(14名)大人(17名) 計 31名

 今夏は体験したことのない猛暑が続き、熱中症アラートが連日発表されたり、豪雨が発生したり異例づくめでした。講師の今野先生も猛暑の中、里山の虫はどうなっているのか、何度も下見をされて、しかも昨年とは違った視点での観察会の準備してくださいました。

 今日のテーマの一つ目は、幼虫はどこでどのように適応して生きているのかです。夏が過ぎてやや傷んだ梅の木の葉の裏には2㎜ほどの幼虫、ホソヘリオイラガがくっ付いています。しかも、小枝の先には小さな堅いイラガのマユもあり、幼虫がシュウ酸カルシウムを口から吐きながら巣を作ったとの事です。触ると非常に堅かった。

 次はヌルデの木の枝や葉を観察しました。5㎜程の白い粉状の物体が枝についています。幼虫はお尻から本物のロウを出しているとの事で、約10年前に日本に侵入し今大発生している中国原産の外来種、チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫です。その傍には1㎝程のこげ茶の羽を持った成虫もいます。ヌルデの葉をもっと観察すると、葉っぱを数枚丸めた空洞の部屋があちこちで見つかりました。糞だけ残された空っぽの部屋、別の所では2㎝程のクロスジキンノメイガの幼虫が葉っぱの部屋で野鳥等の外敵から身を守りながら幼虫期をひっそりと暮らしています。

 里山では勢いよく畑全面を覆ったカナムグラの葉の中に少し変形した葉を裏返しました。黒いトゲトゲの小さな幼虫はカナムグラを食草にするキタテハです。

 次は、カミキリムシの幼虫を捜して栗の林に移動です。農園では栗の大木が枯れてしまったため、幹を細かく裁断して穴ボコだらけの幹がテーブルに沢山置かれていました。カミキリムシがクヌギの幹に卵を産み、その幼虫が幹の中に侵入し栗の木を枯らしてしまったのです。木の皮から侵入した小さな幼虫は、セルロースを溶かす消化液を持っておりセルロースを栄養として利用できます。木の幹全体に開いた大きな穴、小さな幼虫の大きな力に驚くばかりです。近くの切り株を剥いでカミキリムシの幼虫を探した所、やっと黄色の5㎝程の細長い幼虫を見つけ観察しました。葉っぱの中で静に暮らす小さな幼虫から、大きな力を持った幼虫まで昆虫の生態に驚くばかりです。

  

 2つ目は、クルミの木の下に移動して先生が事前に仕掛けたトラップでの昆虫の観察です。肉片を楊枝に刺して机に立ててあり、その肉片をぶんぶんつついていたのはキイロスズメバチです。肉から切り取った肉団子をくわえて、巣のある方向に一直線に飛んでいきました。スズメバチは自分では肉片を食べず幼虫に与え、幼虫が体内で消化して液体になったものを親が口で受け取って飲みます。この現象を「栄養交換」といいます。なぜそんなことをするかというと、親のスズメバチは腰が細くくびれているため肉片のような大きな固形物が体内を通過できず、肉を消化する消化液も持っていないために、幼虫に肉片を与え消化してもらい、消化された栄養を幼虫からの口移しで受け取り生きているのです。

 次は、プラスチックのコップに肉片を入れて地面に埋めたトラップです。夜にコップに落ちた生き物を観察するのです。3か所のトラップには夜行性の生き物がコップに入っていました。1つには大きいアオオサムシ、モリチャバネゴキブリ、カメムシの仲間、ニクバエの幼虫、ニクバエは卵を体内で孵化させた幼虫(ウジ虫)を直接餌の上に産み落とす昆虫で、昨日置いたばっかりの肉片の上をもう無数の小さな幼虫がうごめいています。2つ目にはミイデラゴミムシが活発に動きまわっていますが、その体をつついて刺激すると、その瞬間に化学反応させて生み出した高温で過激な液体の刺激物を霧のように噴射、噴射の度に先生も顔を反らせた程です。3つ目のコップにはミイデラゴミムシとキンバエが産んだ卵がコップの壁面に塊状についています。里山の夜の生き物たちの活発な様子がトラップを通してリアルに伝わってきました。

 

 その他、里山で日向を飛び回るシオカラトンボを捕獲して、なぜ日向を好むのか、紫外線から身を守る灰色の粉の不思議や、4枚の羽根の先についている黒い小さな縁紋が高速飛行時の風による羽根の振動をおさえるためトンボは高速で自由自在に飛べることなど、トンボの生態の不思議を沢山教えて頂きました。

 猛暑の中で何度も水分を補給しながら飽きることなくとても楽しい観察会でした。先生は子供たちが興味を引く体験やお話を、何度も里山に足を運んでご準備くださいました。心より感謝申し上げます。

 

By Tanoさん(五斗蒔10月号より)

 


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