2025年9月6日土曜日

2025/09/06 夜の観察会「鳴く虫」

 9月6日 

 講師:Yoshiさん

 参加者:子ども10名、大人7名 スタッフ:大人9名、子供2名

 まだ夏の暑さが連日続いていますが、何となく秋の雰囲気の欠片が感じられるようになってきました。今夜は満月期で、里山も明るく夜の観察会にはもってこいです。秋の鳴く虫の声を聴き、姿を見つけに出かけましょう。

 いたるところでリーリーリーと大きな声で鳴いているのはアオマツムシです。明治時代に東京の赤坂で見つかり、大正時代に新種記載されたユーラシア大陸原産の外来種で、樹上でひっきりなしに鳴いています。オスもメスも全体が鮮やかな緑色で、葉の上で擬態している姿を見つけることが出来ました。その間から聴こえてくるのはチン・チン…というカネタタキの声です。暑いのでチンチンチンと随分速い鐘の音になっていました。

 アオマツムシの大声に負けないほど大きな声でたくさん鳴いているのはエンマコオロギです。体が大きく、路上に出ている事も多いので姿も見つけやすいです。丈の高い草の茂みから聴こえてくるのは日本の鳴く虫の王スズムシと女王カンタンの声です。鳴く虫は基本的に雄が前翅に発音器を持つので、鳴いているカンタンは女王と呼ばれても実際は雄です。野外のスズムシの声はリー…ン・リリー…と切れ切れの声で、飼育されている個体のリーン・リーンと同じリズムを繰り返す強い声とは違います。飼育下では多くの雄が密集しているため、強い声になるのです。

 砂利道に出てきているコオロギの中に、クマスズムシを見つけました。スズムシとは違って体は小さく、スイカのタネをちょっと大きくしたような色と形をしています。触角にはおしゃれな白いワンポイントがあります。鳴き声はヒィィーンと高い金属音ですがこの場所では聴こえず、後の観察会終了後の池から帰る道で聴くことが出来ました。

 路上に出てきているのは鳴く虫ばかりではありません。ゴミムシの仲間やムカデの仲間、若い小さなウシガエルが見られました。特にウシガエルは数が多く、もしかしたら数日前の雨で池から流されてきたのかもしれません。

 里山の草地でしばし採集をしました。藁の山にはエンマコオロギとツヅレサセコオロギがたくさんいました。イネ科の草地にはまだ鳴くことはないクビキリギスの幼虫や、鳴く虫ではないけれども直翅目の仲間のコバネイナゴやツチイナゴの幼虫がいました。今年はツチイナゴの幼虫が多いのでしょうか、たくさん見られました。ツチイナゴの幼虫は複眼の下に涙のような線があるのが特徴です。クビキリギスとツチイナゴはこれから成虫になり、冬を越して来春に繁殖します。

  

 捕まえた昆虫のお話をした後、池に向かって虫の声を聴きながら進みます。果樹園にはハヤシノウマオイがいました。この他、ササキリの仲間やツユムシの仲間を見つけられることを期待していたのですが、残念ながらわずかにセスジツユムシの声を聴くことが出来たくらいで、姿を見ることまでは叶いませんでした。散策路の傍らの落葉の下ではオカメコオロギの仲間とツヅレサセコオロギが鳴いている姿を見ることが出来ました。どちらも里山でよく見られるコオロギです。

  

 最後のまとめの時に、Abさんから「昔の宍塚の子ども達の間で、そこらにたくさんいるクワガタやカブトムシよりもマツムシやクツワムシなどの珍しい鳴く虫を飼って自慢するブームがあった」というお話がありました。その当時からマツムシやクツワムシはこの宍塚にはいない鳴く虫だったのでしょうか。非常に興味深い点です。

 最近は文化が廃れて自然との関係が弱くなっている事を垣間見る機会が多くなっています。古文や童謡、飼育や栽培などの文化と自然観察がつながるような解説もすすめていきたいですね。

By Yoshiさん(五斗蒔10月号から)


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