2013年11月3日日曜日

2013.11.03 月例観察会

五斗蒔だより2013年12月号から転載

樹木 観察会  11 月3日

 昨年に続き、谷本丈夫先生にきていただいた。連休中のためか、子どもの参加者がなく大人10人の参加者。出発後すぐの梅林で「桜切るバカ、梅切らぬバカ」の説明をうけた。桜は切り口から菌に侵されやすいが梅は切っても平気と思っている人がいるがそれは誤解。梅も菌が入る。要は、ねらいが花の鑑賞か実かという違い。枝には木を大きくする枝と実がなる枝がある。上向きの枝をそのままにしておくと、木が縦にのびることに力を使ってしまい花芽、実ができなくなる。実のつく短枝をたくさん出して、それが陽に当たるようにすることが梅剪定のねらい。
 木の観察ポイントの一つは芽。ウワミズザクラは芽の位置から先が一つの葉となっている複葉。アラカシは芽がいくつかまとまってついて真ん中の頂芽が虫などのためにだめになっても副芽が伸びて木を大きくしていく。広葉樹は木全体にたくさんの芽をつけ、条件のよいものが育つ中で日の当たる方向へ伸びながら広がる。それに対し針葉樹は上へと芽がのびるので細長い形になる。
 どの葉も光をしっかり受け止めるように、葉を縦横十字に向けたり、少しずつずらしたりしている。クサギやアカメガシワをよくみると、上の葉が出ると、その陰にならないように、すでに出ていた下の葉が柄をのばす。そのように葉は、おかれた状況を感じ取って反応している。葉は一定の光をずっと浴びるより、強い光と弱い光の両方のちらちら光だと、光合成の能率をあげることができるが、なぜそうなるのか、生物物理の分野で扱われる問題だ。ちらちら光を使う栽培はハウスで効果をあげているそうだ。観察をしっかりすると、発見があり、重要なことがわかってくる。自然の中での観察がとても大切ということを先生は何度もおっしゃった。
 ハンノキにはタンニンが多く、お歯黒、染め物、下駄の木を色付けなどに利用されてきた。植物が持っているタンニンは木が風にあっても折れずに重い枝葉を支える役目をもつ物質である。鉄のように強固で安定的で、植物には作る力があるが人がこれを分解することは現在の科学ではできない。ハンノキは豆類とは異なるバクテリアがついて窒素を固定する。
 昔はカブトムシが多かった。それも林の縁、道端の木に多く、林の中の木にはすくなかった。それは、陽があたると、木が活発に樹液を流すから。今は老化して樹液の流れの悪い木が増え、カブトムシも少なくなった。
 空洞の目立つコナラの脇で:木は形成層が生きていれば生き続ける。基本は根の健康なので、根がはる部分の土をよくしてやることが大事。固くしめた土の堤防では桜を植えても長い寿命は望めない。その木の一部だけみていたのでは健康な木にはならない。
 どんな木がどのように生えているか、その在り方から、以前のその場所の環境が見えてくる。たとえば草刈場だったところは雑多な樹種の林になる。木の生育は経済学。木の成長にプラスになること、マイナスになることを足し引きして、収支がプラスなら育つ。収入を増やすためにどんな仕組みになっているか、ということをとらえたい。木は資源を消費しない。人間だけが、一方的に資源を消費していく。人類の未来は明るくはない。
 閉会の挨拶後も、自宅の木について相談する人などもいて、駐車場につくまで観察会状態となりました。葉に触わり、葉脈をよく見、ムクノキの実、ニガキの枝を味わったり、においをかいだり、五感を使って木に親しみ、生態系、人類の未来まで、幅広く深いお話をたくさん聞くことができ、充実した観察会となりました。先生に感謝感謝です。 
by Ab


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